友人に、「K摂取を増やすとNa利尿がおこることは、よく経験することだが、皮質集合管では、KとNaの輸送は逆向きであり、K摂取を増やすとNaの尿中排泄は減るように思えるのだが、これはいかなるメカニズムなのか」という質問を受けました。比較的まじめに、回答しましたので、こちらにもシェアしておきます。
非常によくできた総説は、先月号のCJASNにある以下の総説です。
Palmer LG, Schnermann J. Integrated Control of Na Transport along the
Nephron. Clin J Am Soc Nephrol. 2015;10(4):676-87.
この総説の、最後の項を参考にしながら、K摂取を増やすと、なぜNa利尿を起こすかを説明します。
血清Kの急激な上昇は、Na利尿をおこします。このメカニズムは、血清Kの急激な上昇が、近位尿細管、TAL、DCTにおけるNa再吸収を減少させることによると考えられています。ただし、近位のネフロンセグメントでの変化は、糸球体尿細管バランスや尿細管糸球体フィードバックによって、大部分は代償されてしまいます。しかし、DCTにおけるNa再吸収はそのような代償メカニズムの影響を受けません。DCTにおけるNa再吸収の減少は、より遠位のアルドステロン感受性遠位尿細管へのNaデリバーを増やし、Naの再吸収とKの排泄を増加させます。実際、血清Kの急激な上昇が、DCTのサイアザイド感受性Na-Cl共輸送体NCCのリン酸化を減少させていることが示されている(1)。慢性的なK摂取の増加は、NCCのリン酸化のみならず、NCCの総数自体を減少させること(2)、および、NCCの細胞表面への発現も減少させていることが示されている(3)。
つまり、キーになるのはK摂取によるDCT(遠位曲尿細管)におけるサイアザイド感受性Na-Cl共輸送体NCCの活性低下です。
1. Sorensen MV, Grossmann S, Roesinger M, Gresko N, Todkar AP, Barmettler G, Ziegler U, Odermatt A, Loffing-Cueni D, Loffing J. Rapid dephosphorylation of the renal sodium chloride cotransporter in response to oral potassium intake in mice. Kidney Int. 2013;83(5):811-24.
2. Vallon V, Schroth J, Lang F, Kuhl D, Uchida S. Expression and phosphorylation of the Na+-Cl- cotransporter NCC in vivo is regulated by dietary salt, potassium, and SGK1. Am J Physiol Renal Physiol. 2009;297(3):F704-12.
3. Frindt G, Palmer LG. Effects of dietary K on cell-surface expression of renal ion channels and transporters. Am J Physiol Renal Physiol. 2010;299(4):F890-7.